プロローグ「2.0部」

ついてない・・・上城睦月はひしひしと感じた。


「だから言っただろ・・・」
俺の言葉に彼女は耳を傾けてくれない。
「嘘よ!!」
「いや本当だって・・・」
目の前にいる女の子は山中望美。俺の彼女・・・というより数少ない女友達といったほうが正確だろう、多分。
「絶対嘘!第一そんな話信じられると思う!?記憶がすっぽり無くなってて気がついたら知らない人たちと倒れてたなんて」
このやり取りがもう何回続いたんだろう・・・考えたくないな・・・
「どうして信じてくれないのかな。俺の目が嘘ついてるように見える?」
望美はずかずか近づいてきて見上げる形で俺の目をじっと見つめた。

ゴツ

何かが俺の頬を打ちつけた。どうやら望美の怒りの溜まったストレートが放たれたらしい。俺は顔を抑えて体をかがめた。
「っ〜〜〜!!」
声にも出せないほど痛かった。痣になってるかもしれないな・・・
「見える!!大体睦月はずるいよ!!人を待たせておいて嘘をつくなんて!!」
望美は怒りながら肩のバッグを背負いなおしてさっさと歩き出した。
「だから嘘じゃないって・・・待ってよ・・・」
朦朧とする意識の中、急いで追いついて望美の腕を掴んだ。しかし掴んだときの弾みで望美の手に握られていた籠が落ちて中からテニスボールが転がり落ちてしまった。
「もう!!睦月ったら!!」
望美の機嫌がさらに悪くなったのを感じた。つくづく今日はついてない・・・。俺もボールを拾い始めた。確か向こうの方にも転がっていたな。俺はその茂みに走り出した。望美は、
「すいません、そこのボールとってくれませんか?」
カフェテラスの中に入ったボールを男の人にとってもらっていた。
「ん・・・??」
そのとき、俺は木の根元に何かが置いてあるのを見つけた。何だこれ?それは掌より少し大きめな感じのものだった。その脇には一枚のカードが置いてある。何のカードだ?今こんなものが流行っているのか??とりあえず俺はカードを拾った。
その途端、

俺の頭の中を何かが走りぬけた。それは一つの情報でもない、ただ漠然としたもので言葉では到底言い表せない感覚だった。

「睦月!!」
望美が呼んでいる。急いで俺はかばんにさっきの物とカードをかばんにしまって望美の方に走り出した。
「君、何かかばんに入れなかったか??」
さっきボールを拾ってもらっていた人が話かかけてきた。けど
「え、いや何も。俺帰るわ。」
そう言ってその場を後にすることにした。


これが上城睦月の数奇な運命の始まりだった。


さてここからまた新しい物語が始まるわけだ。橘さんが伊坂を封印してから一息つく間もなくアンデッドたちは出現した。だがもう一つどうにかしなければならない問題があった・・・伊坂が残した遺産、そうベルトだ。そして作られたベルトの話をするには少し話を戻す必要がある。伊坂が封印された日まで・・・

そしてこう名付けることにする。「抗う者たち」と。