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間章

そこは日本から遠く離れた場所だった。場所は中国南西部のチベット山奥である。その山奥に小屋が一軒あった。本来ならこんな偏狭な地で過ごす人間はいないはずだった。だがその小屋の中で音がして人の気配があった。小屋の中は機械や計器、様々なものがあった。しかもどれもがハイテクな物とこれば何故こんなところに住んでいるのかますます訳が分からなくなる。その小屋の中で、
「よし、これで完成だ・・・!!」
その埋もれた機械の中に男がいた。見た目40くらいであろうか。男が使っていた机の上には何かが置いてあった。男はそれを満足そうに見た。
「完成したのか?」
新たな男が小屋に入ってきた。先の男と年齢は変わらなさそうだがよく見れば中国系の顔をしていた。しかも肩に黄色いカナリアを連れている。
「ああ。遂に完成だ。これが彼らの助けになるのは間違いないはずだ」
「・・・の力、そんなのを使おうと考えた君の発想がすばらしいよ」
カナリアを連れた男がにやりと笑っていった。男は机においていた物を取り上げた。まるで見たことの無いデザインだった。掌に納まるか納まらないかきわどい大きさ、そして何かを収納するようなスペースに溝。用途が不明だった。
「だが私一人だけでは出来なかった。君の助けがあればこそ、だ。ありがとう。それでだが・・・」
「私にこれを日本に届けて欲しいのかい?わかった、行こう」
男が言いづらそうにしていたことをカナリアの男はあっさりと承諾した。
「いいのか?それだと君も・・・」
「私のことは別にいいんだ。君の役に立てただけでもう未練は無いよ、それに私に出来ることはまだある」
「・・・蜘蛛か?」
「そうだ。私が近づけば蜘蛛は必ず私の存在に気付き適合者にも影響があるだろう。だがこれは私にしかできないはずだ」
「そうか・・・」
男は悲しそうに言った。そして男は旅の支度を始めた。と言っても軽いもので肩に担げる程度だった。あとカナリアを入れた鳥篭も。
「その鳥、ナチュラルって言ったかな?連れて行くのか?」
「この子はきっと役に立つ。私がいなくてもきっと彼らの道しるべになるさ」
それに応えるように小鳥、ナチュラルが囀った。そして、別れの時が来たようだった。
「必ず届けてくれ。あと剣崎たちのサポートを頼んだぞ、嶋」
「任せてくれ。必ず果たす。烏丸、元気でな」
嶋、と呼ばれた男は荷物を左手に持って右手を差し出した。烏丸も手を出して二人は固い握手を交わした。


その後、一人ぼっちになった小屋で『トントン』とノックする音が聞こえた。
「誰だ?」
烏丸はいぶかしむように呟いた。
そしてドアを開けたときそこにいた者は・・・・