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プロローグ2.5部

「剣崎!行くぞ!」
「はい、橘さん!!」
ギャレンの声でブレイドはカードを展開させて二枚抜いた。ギャレンも続いてカードを二枚抜き取る。
『ファイア』
『サンダー』
炎と稲妻が迸り、
『ドロップ』
『キック』
『バーニングスマッシュ』『ライトニングブラスト』
力が二人の戦士に宿る。ギャレンは銃をホルスターに戻し拳を固め、ブレイドは腰を落として剣を突き刺す。さっきの戦闘で傷ついた狼、ウルフアンデッドは立ち上がり二人に向かって跳びあがった。それに対してブレイドとギャレンも跳びあがった。
「「はああ・・・」」
脚の炎がギャレンの方向を調整しムーンサルトの軌道を描き、ブレイドは空中で一回転して雷に覆われた右足を突き出した。
「はぁ!!」
「ウェーーーーイ!!!」
ブレイドとギャレンの蹴りがほぼ同時にウルフに直撃した。それを受けたウルフが地面に激突し煙を上げた。そして二人が着地すると同時にウルフから雷と炎が解放され爆発が起こった。最後にブレイドが剣を抜き取って再びカードを取り出しそれを倒れているウルフに投げつけた。
『J フュージョンウルフ』??
「やりましたね!橘さん」
ブレイドは戦いが終わって安心した。
「ああ、帰る・・・」
だがそう言ったところでギャレンは言葉を止めた。そしてその目が見ていた方向はブレイドの後ろのようだった。思わずブレイドも振り返った。
「お前は・・!!」
男が立っていた。帽子を被った巨漢だった。ブレイドとギャレンはそれが誰なのか知っている。名は大地、12枚の絵札の一人、上級アンデッドだった。そしてその強さは今まで出会ったどのアンデッドより強い。
「俺は戦いが嫌いなんだ。それを叶えるにはお前達をここで倒すのが一番早いらしい」
大地は帽子を脱ぎながら低い声で言った。距離がそれほど近いわけでもないのに威圧感が迫ってくるようだった。
(どうする・・・?)
ギャレンは必死に可能性を模索した。さっきの戦闘でブレイドのラウズポイントが尽きようとしている、即ちカードを使用できなくなり忽ち変身が解除されてしまう。もうコンボは使えない。それにさっきの戦いの直後。万全のコンディションじゃないのにこの男と戦うのは無謀すぎる。ギャレンの脳裏に『絶望』という二文字が浮かんでは消えた。


また別の場所で睦月は頭を抱えた。
(何だよこれ・・・)
問題用紙を見ながら睦月は心の中で呻いた。季節はすでに夏だった。学生にとっては夏休みと言う長期休暇だが睦月にとっては地獄と思える休暇だった。そしてその日、学校で講習があった。受験生でもある睦月にとっては勉強というものは致し方ないものだがそれでも駄目なものはいくら考えても駄目だった。問題用紙から目を背けて睦月は窓を眺めた。夏の燦燦とした太陽が町を照らしている。

そのときだった

(奴だ・・・奴が来た!!)
突然叫び声と共に頭痛が襲ってきた。それに抗いながら消えかかろうとする意識の中で次の声が聞こえてきた。
(奴は・・・・王!!)

またまた別の場所、街中で男が歩いていた。肩に荷物を担ぎ片手には小鳥を入れた籠。そして目には丸くて小さなサングラス。どこか漫画とかに出てきそうな怪しい中国人に見えても仕方が無いような姿だった。籠の中で黄色いカナリアが鳴いた。
「もう少しだよ、ナチュラル。もう少し我慢してくれ」
男は小鳥にそっと語り掛けた。カナリアもそれが分かったかのように静かになった。そして男はまた雑踏の中に紛れ込むのだった。


最初に言っておきたいことはこれは睦月がアンデッドをはじめて封印してから三週間後の話だということだ。もちろんその間にも剣崎君たちはアンデッドを封印してきた。
『J フュージョンイーグル』『Q アブゾーブカプリコーン』『Q アブゾーブオーキッド』
合計で三枚の上級アンデッドを封印した。そのときの話はまた別の機会に書こうと思う。そのうちのエピソードの一つは僕自身にも深く関係しているのも理由の一つでもあった。そして今、剣崎君たちが大地と遭ったところから第2.5部『抗う者たち』が始まる。
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