エピローグ

その後のことを少し話そうと思う。


ブレイドが追っていたジープがいきなり止まった。そして中から人が出てくる。
「どういうことだ?」
そして車の中にいた烏丸も頭の靄が取れた感覚がした。あたりを見回して自分の状況を確認する。
「私は・・・そうか伊坂のマインドコントロールに・・」
ブレイドが窓をとんとんと叩いた。
「所長、大丈夫ですか?」


そして二人は海岸に来た。橘は砂浜に立ち尽くし伊坂の姿はもうなかった。
「橘さん、やりましたね!」
剣崎は笑顔を向けた。そして手にはスパイダーのカードと深緑のバックルが握られていた。
「カードも無事取り戻せましたよ!」
「そうか」
そう言って橘は静かに烏丸の方を向いた。
「所長・・・これはお返しします」
差し出したのはギャレンのバックルとカードだった。
「どういうことだ?」
「少し・・考える時間が欲しいんです」
「そうか・・・」
烏丸はそれ以上何も聞かずそれらを受け取った。そしてその場を立ち去る橘の背中にこう言った。
「橘!小夜子さんのことは残念だと思う。正直な話、私にも非がある。だが、こうしている間にもアンデッドは現れるだろう。そしていつか君が再びギャレンとなって戦うことを私は願ってる」
橘はバイクに乗っていってしまった。



・・・ここで休憩だ。僕は立ち上がってコーヒーを入れることにした。姉さんから少し習った方法で淹れて最後は僕なりにアレンジ。その時家のドアが開く音がした。誰だろう?行ってみたら、
「あぁ橘さん!」
橘さんが珍しくやってきた。
「ほら、差し入れだ」
食べ物が入った袋を差し出した。僕はそれを受け取り中へと促した。
「コーヒー淹れたけど飲む?」
「あぁ、頼むよ」
そして椅子に座って書きかけの小説が書かれたモニタを見つめた。
「はかっどってるのか?」
「まあまあ、今ちょうど一区切りしたところだよ」
「ふふ・・そうか」
大人っぽい笑顔で微笑んだ。小夜子さんへの気持ちの整理はついたのかな・・・でもそれは聞かないことにした。それは橘さん自身が決めることだ。そして僕はコーヒーを差し出した。けど橘さんは一口含んだだけでカップを机に置いた。
「苦味が足らなさ過ぎるぞ・・・」
「これがいいんだよ。牛乳たっぷり入れたから」
橘さんはそれを聞いて怪訝な顔つきをした。多分『彼』も似たようなことを言うんだろうな・・・そんなことをふと思ってしまった。


橘さんも帰って僕はこの仕上げにかかることにした。ここで1クールとか第一部、って名前はさすがに寂しいものがある。
「これなんて名前にしよう・・・」
この話にふさわしい名前、少し考えて一番納得いく名前を思いついた。

そう。全ては始まったばかりだ。その思いを込めて僕はパソコンにこう入力した。

「巡り合う者たち」
ってね。

-Fin-