カテゴリー1「出会い」

今まさに怪物に向かおうと構える剣崎と橘。その怪物はその状況を把握し二人の攻撃が届かない空中に避難した。
これでは攻撃が届かない。そう思い橘はホルスターに手を掛け銃を抜き取る。銃はただの拳銃やマシンガンでもない、虎太郎も見たことのないものだった。真っ赤に彩られシリンダーあるはずの部分はダイヤの紋章、そしてバレル上側に見られる溝のようなものや側面になぜかあるデジタルの数字。でも銃にしては少し分厚いような気もするが・・・。
照準を定め橘は数発撃つ。 しかし空中に逃げた怪物はひらりと回避し再び大量の蝙蝠を呼び寄せる。
「くそ、何だよこいつら!」
剣崎は周囲の蝙蝠を追い払おうとするが如何せん数が多すぎる。
このままでは奴に逃げられてしまう・・・そう思い橘は状況を判断し直す。さっき剣崎が突き破ってきたようにここはそんなに深くない、天井のすぐ上は地上のはずだ・・・そして敵は蝙蝠・・・。
「よし!」
橘は上方向に銃口を向け発砲。それを見て全く訳のわからない剣崎。
―――が結果はすぐに出た。周囲の蝙蝠たちが一斉に逃げ視界が開ける。そして上から差し込む無数の光の筋。そう、橘は天井に撃ち光を入れたのだった。
「!?」
急な光によってひるんだ姿を見せる怪物。今まさに剣崎に攻撃しようとし低空にいたのだ。すかさず剣崎は右ホルスターから剣を抜く。
これもおかしな剣だった。直刀だけど刃は片方しかたっていない、それでも日本刀くらいの大きさだろうか。これにも見える謎の溝やデジタルの数字。そして柄のあたりがこれも分厚い。
「はっ!!」
掛け声と共に剣崎は怪物に斬りかかる。袈裟に切り込み地に落ちる怪物。
そして次の光景は虎太郎を驚かせた。



ジャラララララッ、という音と共に柄のあたりから扇状に何かが広がる。剣崎はそこから一つ何かを取り出す。デザインは分からないがカードのようだ。それをさっきの溝に通す。その瞬間―――――
「タックル」
無機質な声は剣から出たらしい。そして数字が少し減る。その瞬間、カードから何か出てきた・・・青白く猪のレリーフのようなものが出現し胸に付きそして消える。透明なオーラのようなものが剣崎の周囲に出る。剣崎は腰を落とし剣に右手を添え怪物に突進した!
「はあぁぁぁ・・・・!ウェイ!」
しかし一直線な攻撃のためか怪物にも動きは読めた。カウンターをあっさりと受け剣崎壁に激突。それを見た橘は」
「お前の歯が立つ相手じゃない。見てろ。」
そう言い銃に手を掛け剣崎と同じように扇状にカードを展開させた。うち二枚を手に取り溝に通す。まるでカードリーダーのようだ。
「ファイア」「ドロップ」「バーニングスマッシュ」
カードから天道虫と鯨のレリーフが胸に貼り付き消えた。
そして橘の足に炎が宿る。
「はぁぁ・・・はっ!!!」
橘は飛びムーンサルトのような弧を描きつつ自身の体もねじり回転させる。上からの強襲・・・怪物の頭のすぐ上に橘の姿があった。しかし橘自身はさかさまになっている。そして右足、左足と足の甲で怪物を地に叩きつける。
決着はついた。

カチャッという音と共に仰向けになった怪物のバックルが開いた。橘はカードを展開させ一枚抜き取る。
「カテゴリー8か・・・おもしろい」
そう言ってカードをトランプ手裏剣の用量で怪物に投げた。怪物に刺さった瞬間・・・怪物がカードに吸い込まれている!!怪物が跡形もなく消えるとカードは独りでに橘の手に戻ってきた。


「何だ・・・・あのカード?」
虎太郎は全く意味が分からなかった。カードを使って敵に攻撃したと思ったらまた別のカードを使って怪物を消し去ったのだから。もはや魔法なんてものじゃない、見ている限り種も仕掛けもないからだ。うわさでは怪物と戦う人たちのことだけでカードの事は全く出ていなかった。
「取材しなきゃ・・・」
そう呟いて虎太郎は機会をうかがう・・・・・


「やりましたね。橘さん。」
橘に近寄る剣崎。しかし橘は冷淡にこういった。
「剣崎、ただ闇雲に戦えばいいもんじゃない」
厳しいけどそれは確かな事実。咳を一つして橘はバックルのレバーを引く。するとバックルのダイヤマークが裏返ってカードが現れた。そのカードを抜き取った途端、橘は「人間」の姿だった。どこかクールな青年だと虎太郎は思った。でも何となく苦手だな・・・・とも思ってしまう。
「は・・・はい」
そういった剣崎も「人間」の姿だった。どこか親切そうな感じの青年がそこに立っている。取材するなら断然こっちだな・・・虎太郎はまだ機会をうかがう。


「いくぞ」
それだけ言った橘はバイクに跨り足早にその場を去った。剣崎もそれに続こうとしバイクに跨るが後方からの声に思わず振り向いてしまった。
「いや〜君、最初はかっこよかったけど後は全然駄目だった」
「な・・・何だお前!?」
驚きを隠せない剣崎。それでも虎太郎は畳み掛けるように話しかける。
「僕の名前は「白井虎太郎」ノンフィクションライターを目指してるんだ。今『仮面ライダー』って呼ばれる人たちが未知の生命たちと戦ってるっていう都市伝説が話題なんだ。でもそれは噂だと言われてた、けど本当だったんだ!!ねぇ、よかったら取材させてもらえないかな?」
「し・・・知らないよ。何言ってんだ!」
動揺しまくる剣崎。もはや図星であると見え見えだ。
「頼むよ〜。君たちの事調べてわざわざここまで来たんだ」
聞けばこの白井虎太郎という男、岩壁をロープでわざわざ下ってきたのだ。それでも『所長』にはばれないよう念を押されている。
「駄目なものは駄目なんだ!!じゃあな!!!」
そう言ってしがみついていた虎太郎の腕を強引に振り解き走り去ってしまった。そして一人取り残される虎太郎。

「ちぇ・・・・なんだよ・・・」


これが出会いだった