カテゴリー3「古のリプレイ。その2」

ブレイドの前に躍り出たカリスはそのまま攻撃に転じた。
「うらぁ!!」
カリスの急な登場にブレイドは動揺を隠せない。カリスのパンチを受け止めたかと思うと回し蹴りがブレイドの体に入る。後ろに下がったブレイドも剣での反撃を試みるがカリスはそれを蹴りで弾きさらにそのままの姿勢で横っ腹に蹴りを入れる。まさに獣のごとき動きだった。

「これは・・・!」
「中止にしましょう。」
研究員達が口々に言った
「いや、続けろ。カリスも計測しろ。」
「は、はい。」
モニタにカリスの映像と数値が表示されていく。
「これでいいんだ。私はこの瞬間を待っていた。争い、諸共に倒れてしまえ。この世にライダーは必要ない。私の作る究極の一体だけでいい。」
小窓から戦いを伊坂は冷徹に見つめていた。



「もっと南に向けて!」
「はい。」
虎太郎は普段見せないような生真面目な返事・・・少し似合っていない返事をしパラボラアンテナを動かした。言われた方向に少しずつ動かしていき・・・
パソコンからアラートが鳴り響いた。
「やった!!」
「ほんと!?」
虎太郎もパソコンのモニタを覗き込んだ。日本地図がクローズアップされスペードマークと青色の逆円錐が表示された。
「ブレイドが・・剣崎君が戦ってる!」
「やったぁ〜。生きてたんだ!ありがとう神様〜!」
そう言って虎太郎は十字を切った。そして
「あぁ〜喉かわいた。」
冷蔵庫のある台所に向かう。栞は携帯を取り出した。
「橘さん!南東11qに剣崎君をキャッチ!お願い、急いで!!」
「わかった。」
虎太郎は冷蔵庫からいつもの牛乳を取り出しあっという間に飲み干した。そして二本目を取り出して今まさに口をつけようとしたまさにその時、
「何よこれ!?」
栞の突然の言葉に思わずむせ返った。
「どうしたの?」
若干涙目の虎太郎はカウンターから顔を出した。
「ブレイドの周りにアンデッドが三体もいる。」
モニタにはブレイドを取り囲むようにアンデッドを示す逆円錐が立っていた。
「三体・・・あぁ神様〜〜」
虎太郎は冷蔵庫の隣にへたり込んだ。
「どういうことなの・・・」


バイクに乗る橘の腰にベルトが巻きついた。
やってやる。本当に恐怖心がおれの体を蝕んでいるのなら・・・・そんなもの俺がぶっ飛ばしてやる!!
「変身!!」
ゲートをバイクごと通り抜けギャレンへと姿を変える。

研究室でアラートが鳴った。
「ライダーシステム1号、ギャレンがこちらに向かっています。」
「ギャレンが?ふっ・・・それはいい。探す手間が省けた。早く来い、ギャレン。」

二対一の攻防が繰り広げられている。カリスのアローを回避しながらトリロバイトのクローを剣で弾いていく。逆にカリスのアローと剣がぶつかり火花を散らしあう。今度はブレイドがトリロバイトに剣を振るうも盾で防御、さらにカリスが容赦なくアローで攻撃する。
まさに死と隣り合わせのワルツを踊っているかのようだった。


「ありがとうございました。」
同時刻、ハカランダでは一人の男が出て行った。その男が座っていた場所に一つの紙袋が置かれていることに遥香と天音はまだ気付いていない・・・



白井邸では二人が落ち着かない様子をしていた。栞は居間で壁と壁を行ったり来たりし虎太郎は冷蔵庫の横に座ったまま手を組んで祈っている。そこに栞の携帯がメールの着信を告げた。
「所長からだわ!」
内容を確認した栞は言った。
「え!?何だって?」
虎太郎は立ち上がり台所から出て携帯を覗き込んだ。
『ギャレンをこっちへ向かわせるな、止めろ』
これだけだった。
「どういうことだ?こっちってことはそこに所長が居るってこと?」
「それよりギャレンを止めなきゃ。」
「でも剣崎君はアンデッド三体と戦ってるんだよ。あぁ〜そんなに体悪いのかよ、橘さん。」
虎太郎はグシャッとさせた。栞は電話を試みるも繋がることは無かった。



「カリスとブレイドの融合係数は?」
「はい。ブレイド,1120EH、カリスのテロメア配列修復始めました。融合係数979EH」
椅子に座りながら伊坂は、
「ブレイドに引きずられるようにしてカリスの融合係数も上がる。ふふ・・・ははは!!これがのバトルファイトだよ!一万年前のリプレイだ!!」
声を出して笑った。しかしあそこで戦いたいと思っている自分がいる、これがアンデッドとしての本能か・・・伊坂はうっすらと思った。だが封印されるわけにはいかない。俺にはやるべきことがあるのだからな・・・
「ギャレンがここに突入します!」
研究員の声と共にコンクリートが砕ける音がした。


壁を突き破ってギャレンが突入した。
「剣崎!!」
「橘さん!?」
カリスと刃を交えていたブレイドはギャレンが入ってくるのを見た。カリスもそっちをちらりと見た。
「お前は・・・」
ギャレンは思い出した。海岸にいた奴だと。ギャレンはブレイドの方に走り出した、が
「!?」
突然横からトリロバイトが飛び出した。それに連れ去られるようにギャレンは横に飛ばされる。
「橘さん!」
しかしギャレンの心配をそうそうできる状況ではなかった。少しでも気を抜けば目の前の奴にやられてしまう。
立ち上がったギャレンはトリロバイトのクローを後ろに身を引いて回避、そして今度は一気に懐に入り込みパンチを打った。
「俺に・・・俺に恐怖心など無い!!」

戦いは既に混戦とかしていた。伊坂の言うとおり「バトルファイト」にふさわしい。カリスのアローとブレイドの剣がぶつかり合うたびに散る火花、ギャレンの拳がトリロバイトの強固な体を叩く音が混ざり合っていた。そしてクローがギャレンのボディを打ちつけた。

「ギャレンの融合係数はどうだ?」
「はい。融合係数543EH・・・いや数値が下がっています。」
モニタに表示された数字がどんどん下がっていく。
「480・・・460・・・」

そしてそれは戦っているギャレンにも見られ始めた。
「ぐはぁ!」
トリロバイトの攻撃回数が増え、さらにギャレンの防御が間に合わなくなっている。盾を体に打ち付けられさらにクローによる攻撃。トリロバイトの激しい攻撃で遂にギャレンのベルトが外れ橘へと姿を戻した。

「これが烏丸の言っていたライダーシステムの弊害か。ふん、所詮人間が作ったシステム。脆い人間の恐怖心が引き金となってカテゴリーAとの融合に齟齬が生じ戦う力を低下させる。」
伊坂は呟くだけだった。

「う・・ぐあぁ・・」
「橘さん!!」
ブレイドは橘の方に向かおうとするがカリスがそこに立ちはだかった。
「お前の相手は俺だ・・・」

立ち上がろうとしても力が入りきらない。バックルに手が届かない。トリロバイトがこちらにゆっくりと歩いてくる・・・。逃げるように壁ににじり寄った。
「く・・・来るな!」
橘は裏返った声で言った。しかしトリロバイトがその歩みを止めることは無い。その時だった。急に今朝起こったことがフラッシュバックされる。
"サァーーーーー・・・・"
限りなくリアルなあの幻覚。そして目の前に迫ってくるアンデッド。体が消滅していく映像。全てが橘の頭の中でミキサーのようにかき回されていき、どんどん目の前の景色がぼやけていく。

そして何かの糸がプチンと切れた感覚がした。

恐怖に心を支配された橘は
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁ!!!!」
人の声とは思えない叫び声を部屋中に響かせた。



「橘さん!!」
橘の声をブレイドは確かに聞いた。カリスに突進し
「ウェイ!!」
剣で真正面から斬りにかかる。カリスのアローによる防御を弾き飛ばしさらに切り返しカリスに攻撃を与える。雪山でのときのように速かった。
弾き飛ばされたカリスは攻撃の手を緩めそのまま傍観するような視線をブレイドに送る。それを知ってか知らずかブレイドはカードを展開させ二枚抜き取った。
『サンダー』
『キック』
レリーフが浮かびあがりブレイドの胸に貼り付く。
『ライトニングブラスト』
橘を救うためブレイドは新たなる力を発現させた。雷鳴が周囲に轟く。


それと同時に変化は研究室でも起こっていた。